日めくり雑語り帳

映画の感想とかとか 備忘録

『SNS-少女たちの10日間-』感想 着信音て嫌だよね(ネタバレ)

各所で話題のドキュメンタリー映画、当然気になってたので見てきました。

 オーディションで選ばれた三人の成人女優が子供っぽい格好をして、12歳の女の子になりすましSNSのアカウントを開設。コンタクトを取ってくる男たちがどんな言動を子供に見せるのかを写し出すドキュメンタリー。

ポスタービジュアルがもうだいぶグロテスクな不気味さある。ピンクのメルヘンな部屋で女の子がチャットしてるけどその部屋はセットで、パソコンのカメラには映らない背後でクルーが撮影してる。この映画は実際こういう感じで撮られてるんですね。
画作りでいうとこれはみんなが言ってることで、モザイクが独特。12歳の女の子に寄ってくる男たちの顔面を公開するわけにいかないのでモザイクかかってんだけど、ふつうに顔全体をぼんやりさせるんじゃなく、目と口だけはしっかり見えてる。そのおかげで単純に不気味というのもあるし、どんな表情してるのかもわかる。てか知り合いが見たら個人特定できちゃうんじゃないか。

音も印象的でした。良からぬことが起こる場面ではなんか強風が吹いてるみたいなゴォォ……って音がする。コワイ。
それに何度も鳴るskypeの着信音。軽快なメロディだけど着信=良からぬことに決まってるので曲自体を嫌いになってしまう。着信音というものの常で、静かな中で唐突に鳴り出すし。コワイ。

肝心の内容、少女が受ける性被害の話でいうと、最初のオーディションからキツかったですね。彼女たちが子供の頃にどんな経験をしたか語るんだけど、みんな当たり前のように酷い目にあってきたと。この時点で、ネットを介した子供の性被害が特殊なケースでないことがもうわかる。俺自身は少女どころか知らない人と話すのじたい極力避けるからまったく想像の及ばない世界だった。ネットでコミュニケーションとるのが当たり前の世代からすれば、そこでヤバい奴に声かけられるのも普通にあることなんですね。そもそも電車やバスで痴漢にあうとか路上で変質者と遭遇するとか、女性はみんな経験あるっていうけど、俺のような男性からはなかなか見えないところなので、こうして可視化されるとかなりダメージ食らう。

で、アカウントを立ち上げた瞬間、何人もの男が接触を図ってくる。チャットを開けばセックスはもう経験ある?とか直球のセクハラを投げてくる。自分のポコチン写真を送りつけてくる。こんなにいろんな人のポコチンが出てくる映画もそうそうないと思います(もちろんモザイクつき)。
関係ないけど、ポコチン見られて喜ぶのって一般的な性癖なんでしょうか。自分にはまったくないものなので、性癖としては普通にあることなのかってのもよくわからん。個人的には全然理解できん。

さらに「服を脱いで」とか「写真送って」とか言ってくる。これは自分のモノを見せることに比べれば神経はわかる。大人同士であれば、そういうやりとりもまああるんだろうなと思える。しかし相手は子供なのである。
このあたりは性科学者の先生が言ってた「彼らは小児性愛者には当てはまらず、単に御しやすい女性を狙っているが相手が子供であることを考慮できてない」「女の子たちがそれを受け入れるのは、自分より大きくて強そうな相手の言うことに従ってしまうという当然のこと」みたいな解説が目からウロコでした。言い訳としてよく使われる「実際に写真送ってきたんだから好意あったんだろ」という理屈はこうして生まれたんだな。

おじいちゃん(50歳らしいけど)と通話してるとき、上半身しか写ってないけど右手がなんか上下運動してるんで「何してるの?」と質問したところ「磨いてるだけだよ」との返答。通話を切った瞬間一同爆笑。って場面がかなり印象に残った。緊張し続けた結果、変態のおかしな発言で一気に弛緩するという。逆に撮影のハードさが感じられた。

唯一、性的な要求を一切してこない男性も登場する。彼は少女に対して「ネットで話しかけてきた見知らぬ男に写真を送ったりしてはいけない」と諭し、「君はとても賢い」と優しい言葉をかける。男性にその気がないことが明らかになると、だんだんモザイクが取れる。少女役の女優はみんな「まともな人に出会うだけで感動する」と泣く。スタッフも泣く。感動的な音楽が流れる。ここが恐らくもっとも賛否両論なポイントじゃなかろうか。つまり、終始まともな言動だったこの男性はみんなが言うように「まともな人」なのか? というポイント。まともならわざわざ子供に接触してくるか? ってことですね。個人的には、相手側の心情が見えないところであれこれ推測してもわからん! と思います(思考停止)。

終盤は、頻繁に通話してくる何人かの男と実際に会う。口八丁手八丁で肉体関係を持とうとするも女の子のパパ(正体は監督)から電話がかかってくると急いで立ち去ろうとして椅子を倒すという絵に描いたような慌てっぷり。
男女カップルでやってきて3Pを持ちかけるヤツもいる。性暴力は男からだけ向けられるってわけではないんですね。

男たちの中で最も印象深かったのは、女友達の獣姦映像を送りつけてきたいかにもワルそうな態度のヤツ。裸の写真を何度も要求してきたので送ってあげると要求がエスカレート、従わなければ写真をネットにあげると脅迫して本当にアップ。裸の写真はヌードモデルを撮影して顔だけ本人を合成したものだけど、安全策としてそれならいいのか……? と若干納得いかん。実際に会ってみてまだ脅迫してくるので女優ブチギレ、ママにバレてもいいわバーカ! とジュースをぶっかける。スカッとチェコ。「自分に自信ないの!?」と怒鳴ったら「ないんだ……(´・ω・`)」と急に弱気に。子供を支配するしかフラストレーションのはけ口がない男の病みが垣間見えて、ここで初めて加害者に共感……とはいかないまでも、なんとなく気持ちがわかった気がして辛かった。

接触してきた男たちの中に偶然スタッフの知り合いがいて、そいつはなんと子供たちと触れ合う仕事をしている。ラストあたりでソイツの家に突撃、どういう気持で少女を食い物にしてんの!? と問い詰めると「くだらん映画撮ってんじゃネェ!」と逆ギレ。「ジプシーの問題をもっと取り上げるべきだろ!」と全然関係ない社会問題を持ち出して話をそらそうとする。こういうヤツもいるよね〜!

とまあそんな感じでスカッとチェコな展開もあるんですが、やっぱりちょっと信じられない数の男が近づいてくるので(2,458人ですってよ)、ほんとにこれはどうにかしないと……。撮影に立ち会った弁護士の先生は「彼らのしていることはれっきとした犯罪だし、こんなことが起こりうる状況を放置している運営はおかしい」と言ってましたよ。日本でもそう変わらないはずで、仮に自分に娘(息子でも)ができてネットに触れたら……とか考えると恐ろしい。のみならず、自分自身を顧みて、さすがに12歳をどうこうしないとしても、女性相手に誤った性的アプローチをしないよう注意しないとネ……という、あんまり映画の主題とは関係ないようなあるようなことを考えました。おわり!