日めくり雑語り帳

映画の感想とかとか 備忘録

漫画いろいろ読んだよ報告

漫画の感想記事とか書きたいな〜と思ってたんだけど、作品ごとに記事作るとあんまり文字数書けなかったからここで一言感想まとめます。

 

夏目アラタの結婚(乃木坂太郎既刊1〜5巻

児童相談所に務める夏目アラタは、父親を猟奇殺人犯「品川ピエロ」に殺された少年・卓斗を受け持つ。卓斗は未だ発見されない父の頭部の隠し場所を探るため、拘置所にいる品川ピエロこと真珠と文通をしており、その際はアラタの名を騙っていた。直接会いたいと言いだした真珠に接近するため、アラタ本人が彼女に面会するも、真珠は合った途端にアラタへの興味をなくしたような様子。自分こそが運命の人だと信じさせるため、アラタは真珠にプロポーズしてしまい、そこから二人の壮絶な騙し合いが幕を開ける……みたいなあらすじ。

サスペンス色が強い漫画で、真珠の内面がまったく読めないのがポイント。環境で悪人になったかわいそうな人かと思いきや、そう見せるための演技のようであり、でも実は演技じゃないのかも……と裏を読むほどに混乱してくる。
そこに切り込むアラタの心情の動き、真相を探るために恋愛ゲームに乗る一方で、本当に愛情のようなものが芽生えてきてるような……。ひたすら暗い物語にならず、ちょっとラブコメっぽい雰囲気もある独特のバランスが新感覚。

 

ミステリと言う勿れ(田村由美既刊1〜8巻

大学生・久能整(くのう ととのう)がいろんな事件に巻き込まれては居合わせた人々にぺちゃくちゃ喋りまくり、ウザがられながらも最終的には関係者全員へのカウンセリングみたいになって事件も解決しちゃうお話。

作者も言う通りミステリじゃないなこれ。ネウロみたいなミステリ風エンタメだ。
作品の核は整くんが喋る内容、社会の矛盾をつく論破っぷりで、古い固定観念に囚われた人々をハッとさせ読者もスカッとさせるところにある。んだけど、言ってしまえばツイッターでバズる論破漫画そのままというか、言いたいことそのままセリフで表現しすぎじゃない?と思ったり。まあそれが整くんのキャラなのでしょうがないけど。もっと若い作家なら、物語の中でうまく昇華するんじゃないかな〜的なことを考えてしまった。

読んでる最中に月9ドラマ化決定のニュースが入ってきてタイムリーさにちょっと嬉しくなりました。菅田将暉主演ということは、フィリップっぽい役作りになるのかしらん。

 

パンプキン・シザーズ岩永亮太郎既刊1〜23巻

 「帝国」と「共和国」とが停戦条約を結んで3年が経ったが、帝国内ではいたるところに戦争の爪痕が深く残る。戦争によって家族や仕事を奪われた人々、居場所を失って暴れまわる元兵士――。そんな戦災からの復興を目指すのが陸軍情報部第3課「パンプキン・シザーズ」。彼らに偶然出会ったランデル・オーランド伍長は、なんやかんやで3課に入ることになる。しかしオーランドは戦中、特殊な実験で生み出された対戦車兵士として殺戮を繰り返し、伝説として恐れられた過去があった……みたいなあらすじ。

複雑なようで単純なようで複雑な物語。
一番わかりやすいところでは、いわゆる「ナメてた相手が殺人マシンでした」ものにジャンル分けできる。温厚で争いを嫌うオーランドが、戦車の中でぬくぬく調子こいた悪人どもをボコボコにしていく様はそりゃあ気持ちいい。でもこれは「戦災」なわけで、悪いやつを殺せば解決というわけにもいかないし、オーランド自身が人を殺したくないという葛藤もある。それだけでけっこう複雑なドラマが生まれる。
さらに物語に深みを与えているのが、政治劇としての側面。上官たちはそれぞれに軍のため・国のためを考えて行動しているものの、理想の方向はひとつではないから、騙し騙されの陰謀が渦巻く。局面によって味方だったり敵だったりする。権謀術数が蠢く中、もうひとりの主人公ともいえるヒロインのアリス・L・マルヴィンは愚直に民のための正義を貫く。
キャラクターたちがみんな一筋縄ではいかない思惑を抱えているのが魅力で、「敵にも悲しい過去が」みたいなの嫌う人も多いみたいだけど俺は好きなんすよ。その悲しい過去のアリスはどう向き合うの? というのが大きな見どころでもあり、この辺はキャラクター造形の巧みさに感心しきり。

ただ、テロ編から顕著だと思うんだけど、セリフ長すぎない? とちょっと思います。いくらなんでも語り過ぎでは……。テーマが「正義とは何か?」とか「戦災とは何か?」とか「どうなったら復興が果たされたといえるのか?」とか「復讐の連鎖はどうすれば止まるのか?」とか哲学的な核心に迫ってるので、問答がメインになるのはしょうがないとはいえ……まずテロ編自体がめっちゃ長いし……。

とはいえ、このテロ編はそれまでにでてきた様々な要素が怒涛の勢いで回収されていくから、もうすぐこの漫画の結末に向かってるのかなと思います。こんなストーリー考えるのめちゃくちゃ難しいと思うので、話作りの現場を覗いてみたい。

 

最近一気読みした漫画はこんなところでしょうか。
またなんか読んだらブログに書きたいです。おわり。

『地獄の花園』感想 ヤンキー漫画について本気出して考えてみた(ネタバレ)

予告がけっこうサムくて苦手だな〜と思ってたんだけど、ちょっと違うぞというレビューを見たのと永野芽郁ちゃんがかわいいので一応見てみました。

ヤンキーOLたちは仕事のかたわら、ステゴロの喧嘩で会社のテッペンを目指す。社内で3つの派閥に分かれて抗争を繰り広げるが、ヤンキーとは無縁の普通のOLである直子(永野芽郁)は他人事として眺めていた。しかし、誰よりも強い蘭(広瀬アリス)が中途入社してきたことから、直子のOLライフは変化していく――みたいなあらすじ。

あらすじから分かるとおり、バカバカしい世界観のコントみたいな映画である。ヤンキー漫画の、喧嘩で成り上がって倒した相手とは仲間になるみたいなノリをOLの世界に持ち込んだわけですな。ヤンキーは派閥、OLも派閥、という発想みたい。バカリズム脚本だけあって、女子の日常を皮肉ったようなギャグでもある。
圧倒的な強さで会社を統一する正義のヤンキー・蘭はいかにもヤンキー漫画の主人公であり、喧嘩のできない親友ポジにいるのが直子。劇中にはいかにもヤンキー漫画っぽいイベントがたくさん展開し、主に直子のモノローグという形で実際に「いかにもヤンキー漫画っぽいナァ!( ゚д゚)」なんて直接言及される。親切設計すぎんかとは思うけど、コントとして誰にでもわかりやすく作られてるのだ。ヤンキー漫画をメタ的に捉えてるのね。例えるなら、ゾンビが出てきたのでショッピングモールに逃げ込んで「これゾンビ映画でよくあるやつ!」って思う、みたいな。

 直子はこれも親友ポジあるあるで、敵対する会社のヤンキーチームに連れ去られ人質にされる。直子を助けるため蘭はたった一人でアジトに乗り込んでくるが、ここから少し様子が変わる。
なんと蘭は、敵の頭と対決する前に立ちはだかる中ボス三人衆との決闘で、割とあっさり負けてしまうのである。
ヤンキー漫画なら、負けるにしてもせめてボスに負けるべきで、中ボスは瞬殺するはずなのだ。これはいったいどういうこと? と首をひねっていると、ごく普通のOLだったはずの直子が突然暴れだし、敵を全滅させてしまう。実は直子は喧嘩の天才で、普通のキラキラOLでありたくて実力を隠していたのだった。
ここが作中最大のひっくり返し。これまで「いかにもヤンキー漫画っぽい」が強調されていたのは、実は王道ヤンキー漫画ではない展開の前フリ。舐められがちな地味キャラが最強の戦士でした的なジャンルのお話だったのだ。チンピラ演技が似合う女優で固めた中に一人だけチンピラ感ゼロの永野芽郁を置いたキャスティングがここで活きる。
蘭は喧嘩が強いだけの凡人で、ろくブルやらクローズやらのキャラクターへの憧れから主人公っぽい振る舞いを演じていただけだった。直子の強さを目の当たりにした蘭はすっかり意気消沈、音信不通になってしまう。

ここから作品の雰囲気がガラッと変わるのは、直子の秘密が明かされたことで、映画の世界観に対する彼女のツッコミが入らなくなったことが大きい。「ヤンキー漫画あるある」というメタ的な描かれ方に「ヤンキー漫画あるあるを裏切る」という別角度のメタを追加したことで、観客と同じ視点の直子が観測者から物語の中心になり、世界は客観から主観に移る。「まるでヤンキー漫画」から「ヤンキー漫画そのもの」になる。王道から外れたことで逆にしっかりヤンキー漫画として成立するという不思議な現象。
その後もギャグはいっぱい出てくるが、世界観をイジるギャグではなくヤンキー漫画の作中に登場するギャグになる。レイヤーが変わるというか。うまく言語化できないな。

闇堕ちした蘭が修行して直子に決闘を挑むクライマックスはもう普通にヤンキー漫画として熱い展開。
この修業シーン、OLの業務が戦闘の訓練になるとかベスト・キッド的な、暮らしの中に修行ありみたいな感じだけど、師匠ポジのお年寄りがメチャ強いとことかはヤンキー漫画じゃなく能力バトル漫画パロディだなぁと思ったり。

 最後のオチがくだらないギャグだったのも、ヤンキー漫画の一エピソードをちょっとした笑いで締めるみたいなよくある作りで、確かにこの映画の世界観そのものに対する元も子もないツッコミではあるけれど、それで全部ひっくり返るようなものではないと感じた。みんなだいすき『HiGH&LOW THE MOVIE』の最後にYOUが「みんな喧嘩しすぎじゃなぁい?」って言うのと同じようなもん。

 てか、この映画の天敵がまさにハイローだと思った。
バカリズムは意識的にヤンキー漫画をメタろうとしてるけど、HIROさんは好きなものを好きなまま作品にしたら天然でメタっぽくなってたって感じだし。アクションの質はさすがにハイローに勝てないし……そう、こういう世界観コントはガチな雰囲気を作り上げるのが大事で、アクションはもっと頑張ってほしかった。いや頑張ってはいたけど目新しいものがないというか。まあこの映画見て「アクションの目新しさがほしい」みたいな感想を持つほど真剣にあれこれ考えるとは思ってなかったので、それだけ予想外に良作だったってことです(偉そう)。
永野芽郁のアクションまったく天才感なかったけど喧嘩慣れしてない感じがチャーミングでもあったね……。

『SNS-少女たちの10日間-』感想 着信音て嫌だよね(ネタバレ)

各所で話題のドキュメンタリー映画、当然気になってたので見てきました。

 オーディションで選ばれた三人の成人女優が子供っぽい格好をして、12歳の女の子になりすましSNSのアカウントを開設。コンタクトを取ってくる男たちがどんな言動を子供に見せるのかを写し出すドキュメンタリー。

ポスタービジュアルがもうだいぶグロテスクな不気味さある。ピンクのメルヘンな部屋で女の子がチャットしてるけどその部屋はセットで、パソコンのカメラには映らない背後でクルーが撮影してる。この映画は実際こういう感じで撮られてるんですね。
画作りでいうとこれはみんなが言ってることで、モザイクが独特。12歳の女の子に寄ってくる男たちの顔面を公開するわけにいかないのでモザイクかかってんだけど、ふつうに顔全体をぼんやりさせるんじゃなく、目と口だけはしっかり見えてる。そのおかげで単純に不気味というのもあるし、どんな表情してるのかもわかる。てか知り合いが見たら個人特定できちゃうんじゃないか。

音も印象的でした。良からぬことが起こる場面ではなんか強風が吹いてるみたいなゴォォ……って音がする。コワイ。
それに何度も鳴るskypeの着信音。軽快なメロディだけど着信=良からぬことに決まってるので曲自体を嫌いになってしまう。着信音というものの常で、静かな中で唐突に鳴り出すし。コワイ。

肝心の内容、少女が受ける性被害の話でいうと、最初のオーディションからキツかったですね。彼女たちが子供の頃にどんな経験をしたか語るんだけど、みんな当たり前のように酷い目にあってきたと。この時点で、ネットを介した子供の性被害が特殊なケースでないことがもうわかる。俺自身は少女どころか知らない人と話すのじたい極力避けるからまったく想像の及ばない世界だった。ネットでコミュニケーションとるのが当たり前の世代からすれば、そこでヤバい奴に声かけられるのも普通にあることなんですね。そもそも電車やバスで痴漢にあうとか路上で変質者と遭遇するとか、女性はみんな経験あるっていうけど、俺のような男性からはなかなか見えないところなので、こうして可視化されるとかなりダメージ食らう。

で、アカウントを立ち上げた瞬間、何人もの男が接触を図ってくる。チャットを開けばセックスはもう経験ある?とか直球のセクハラを投げてくる。自分のポコチン写真を送りつけてくる。こんなにいろんな人のポコチンが出てくる映画もそうそうないと思います(もちろんモザイクつき)。
関係ないけど、ポコチン見られて喜ぶのって一般的な性癖なんでしょうか。自分にはまったくないものなので、性癖としては普通にあることなのかってのもよくわからん。個人的には全然理解できん。

さらに「服を脱いで」とか「写真送って」とか言ってくる。これは自分のモノを見せることに比べれば神経はわかる。大人同士であれば、そういうやりとりもまああるんだろうなと思える。しかし相手は子供なのである。
このあたりは性科学者の先生が言ってた「彼らは小児性愛者には当てはまらず、単に御しやすい女性を狙っているが相手が子供であることを考慮できてない」「女の子たちがそれを受け入れるのは、自分より大きくて強そうな相手の言うことに従ってしまうという当然のこと」みたいな解説が目からウロコでした。言い訳としてよく使われる「実際に写真送ってきたんだから好意あったんだろ」という理屈はこうして生まれたんだな。

おじいちゃん(50歳らしいけど)と通話してるとき、上半身しか写ってないけど右手がなんか上下運動してるんで「何してるの?」と質問したところ「磨いてるだけだよ」との返答。通話を切った瞬間一同爆笑。って場面がかなり印象に残った。緊張し続けた結果、変態のおかしな発言で一気に弛緩するという。逆に撮影のハードさが感じられた。

唯一、性的な要求を一切してこない男性も登場する。彼は少女に対して「ネットで話しかけてきた見知らぬ男に写真を送ったりしてはいけない」と諭し、「君はとても賢い」と優しい言葉をかける。男性にその気がないことが明らかになると、だんだんモザイクが取れる。少女役の女優はみんな「まともな人に出会うだけで感動する」と泣く。スタッフも泣く。感動的な音楽が流れる。ここが恐らくもっとも賛否両論なポイントじゃなかろうか。つまり、終始まともな言動だったこの男性はみんなが言うように「まともな人」なのか? というポイント。まともならわざわざ子供に接触してくるか? ってことですね。個人的には、相手側の心情が見えないところであれこれ推測してもわからん! と思います(思考停止)。

終盤は、頻繁に通話してくる何人かの男と実際に会う。口八丁手八丁で肉体関係を持とうとするも女の子のパパ(正体は監督)から電話がかかってくると急いで立ち去ろうとして椅子を倒すという絵に描いたような慌てっぷり。
男女カップルでやってきて3Pを持ちかけるヤツもいる。性暴力は男からだけ向けられるってわけではないんですね。

男たちの中で最も印象深かったのは、女友達の獣姦映像を送りつけてきたいかにもワルそうな態度のヤツ。裸の写真を何度も要求してきたので送ってあげると要求がエスカレート、従わなければ写真をネットにあげると脅迫して本当にアップ。裸の写真はヌードモデルを撮影して顔だけ本人を合成したものだけど、安全策としてそれならいいのか……? と若干納得いかん。実際に会ってみてまだ脅迫してくるので女優ブチギレ、ママにバレてもいいわバーカ! とジュースをぶっかける。スカッとチェコ。「自分に自信ないの!?」と怒鳴ったら「ないんだ……(´・ω・`)」と急に弱気に。子供を支配するしかフラストレーションのはけ口がない男の病みが垣間見えて、ここで初めて加害者に共感……とはいかないまでも、なんとなく気持ちがわかった気がして辛かった。

接触してきた男たちの中に偶然スタッフの知り合いがいて、そいつはなんと子供たちと触れ合う仕事をしている。ラストあたりでソイツの家に突撃、どういう気持で少女を食い物にしてんの!? と問い詰めると「くだらん映画撮ってんじゃネェ!」と逆ギレ。「ジプシーの問題をもっと取り上げるべきだろ!」と全然関係ない社会問題を持ち出して話をそらそうとする。こういうヤツもいるよね〜!

とまあそんな感じでスカッとチェコな展開もあるんですが、やっぱりちょっと信じられない数の男が近づいてくるので(2,458人ですってよ)、ほんとにこれはどうにかしないと……。撮影に立ち会った弁護士の先生は「彼らのしていることはれっきとした犯罪だし、こんなことが起こりうる状況を放置している運営はおかしい」と言ってましたよ。日本でもそう変わらないはずで、仮に自分に娘(息子でも)ができてネットに触れたら……とか考えると恐ろしい。のみならず、自分自身を顧みて、さすがに12歳をどうこうしないとしても、女性相手に誤った性的アプローチをしないよう注意しないとネ……という、あんまり映画の主題とは関係ないようなあるようなことを考えました。おわり!

『るろうに剣心 最終章 The Beginning』感想 ほんとに最高傑作かも(微ネタバレ)

『The Final』は飽き飽きするほど予告編やら特別映像やら見せられてたけど『The Beginning』のほうはまったく前情報がないまま鑑賞しました。完全に一本まるまる過去編でした。

 ときは幕末。緋村剣心佐藤健)は平和な未来を夢見て、桂小五郎高橋一生)のもとで攘夷活動の邪魔になる人間を暗殺する役目を負い、「人斬り抜刀斎」の異名で恐れられていた。人斬りの場面を雪代巴(有村架純)に目撃され、やむなく攘夷派の根城に置いておくことに。二人はやがて心を通わせていくが……みたいなあらすじ。

本作の剣心は抜刀斎として殺しまくりだった時期なのでいつもの穏やかな感じはまったくなく、冷徹な暗殺者。佐藤健はクールな役のがイメージに合ってるので、過去作よりさらにハマってました。殺人に葛藤したり巴との生活で癒やされたりというのをほとんど表情を崩さずに表現しきっててさすが。アクションも人がいっぱい死ぬし血がブシャブシャ出るので楽しい。

前作はドラマ部分がかったるく感じたけど、今作は史実とフィクションの重なりが面白く、テンポもよかった。単純に歴史ものとして楽しく見れました。でもまだ説明しすぎでくどいところはなくもないかも。

完全に過去の話、剣心が抜刀斎となってから西南戦争終結して剣を置くまでの物語なので、前作までをまったく知らなくても問題なく楽しめるし、なんなら最初にこっち見てから一作目以降を見るほうがより深く理解できるのでは?と思います。特に前作『The Final』は先に今作を見といたほうがすんなり飲み込めるはず。巴が死ぬくだりとかなんかよくわからんなと思ってたところが今回ちゃんと説明されて、ここで見せ場になるから前作ではあえて説明不足にしてたのか!と。なにしろ今作で何が描かれるのか全然情報入れてなかったもんだから……。
巴が実は敵側のスパイだったり最終的に剣心の手で死ぬことになるのは前作の時点でさんざん語られたことだからネタバレとはいえんでしょうし衝撃の展開でもないけど、そこも順番が逆ならもっとドラマチックに感情移入できたかも。でも時系列的に最初の話を置くならシリーズ最終作の位置にするのが一番なので不満はない。
過去作と比べて漫画的なケレン味があまりないのも、原作未読者にとってはとっつきやすいはず。これは史実ベースのストーリーだからか、漫画じゃなくOVAを元にしてるからか(OVAも見てないからわからん)。とにかく、今作だけ見ても楽しめるということです。

明確な不満点というかピンとこなかったのは新選組沖田総司村上虹郎)がかなり大きな扱いで登場してた割に中途半端なところで出てこなくなる。明らかに剣心との因縁が生まれたっぽく感じたけどこれ最終作よね? 原作とかOVA見たらわかるんかな?

巴のファム・ファタールっぷりは前作にもまして遺憾なく発揮され、味方も敵も巴のおかげでだいぶ散々なことになってますよね。見た目から明らかに浮いてるのも、今作で納得度がアップしてて好きです。
あと安藤政信かっこいい。

 

一応貼っとく前作感想↓

himekurix.hatenablog.com

 

『BLUE/ブルー』感想 主役×主役×主役(微ネタバレ)

吉田恵輔監督作ということで、これは必見だぜ!と勇んで見に行きました。聞けば監督はずっとボクシングやってて、ボクシング映画を撮りたいと何年も構想を練り続けてたそうな。

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・引用https://eiga.com/movie/94253/photo/

同僚の女子にいいとこ見せたい楢崎(柄本時生)は、ボクシングジムに入会してみる。最初は「ボクシングやってる風」でいいと真剣に練習するつもりはなかった楢崎だが、だんだんと熱中していく。同じジムの実力者・小川(東出昌大)は日本チャンピオンを目指しているが、パンチドランカーの疑いがあった。そのさらに先輩にあたる瓜田(松山ケンイチ)は誰よりもボクシングに情熱を注ぎ、仲間たちへの応援やアドバイスにも余念がないが、本人はなかなか試合に勝てない。三人の道が絡み合い、どんな結末を迎えるのかーーみたいなあらすじ。

キャラクター造形のうまさがすんばらしい。このお話には三人の主人公がいるといえるけど、三人ともそれぞれ単独の視点で映画の主役やっても全然成立する。
扱い的にメインは松ケンみたいだけど、キャラとして一番王道の主人公っぽかったのは柄本時生演じる楢崎。コメディリリーフ担当だけど実はボクシングのセンスもあって、周囲との交流により才能が開花していく……みたいな。好きです。
コメディシーンでいうと、最初の中学生と揉めるところ(声変わり中の声でオラつく中学生も最高)とかけっこう繊細な演技なんじゃないかと笑いながら感心しました。
あと、ボクシングを始めるきっかけになった同僚女子が別の同僚に取られたあと「俺にはボクシングしかないんで」ってドヤるところ。負け続けても諦めない松ケンと同じセリフなのにこの差はなんや!という。でも当人としては真面目な気持ちで言ってるんだろうなというのも共感できて好感度高い。
東出昌大の小川は共感という面では一番遠いところにいるキャラだけど、強いからこそ引退に繋がる病気を明かせずにいるんですね。この弱い面が観客の感情移入を誘う。それに実力があるからといって調子に乗ってもなくて、先輩の松ケンのアドバイスを真摯に聞いてるあたりもよい。
そして松ケンこと瓜田!超すき!めちゃ弱いんだけどボクシング愛は人一倍、勝てなくてもボクシング以外の生き方ができない男。負けるのは悔しいのに他人には明るく振る舞ってみせ、それが逆に何ヘラヘラしとんねん!みたいに言われることもある。たぶん教える側に徹すればかなり有能なんですよね。この映画は彼が夢を諦めるまでの話ともいえる。夢を諦めることの難しさ、吉田監督の過去作ではマイフェイバリットの『ばしゃ馬さんとビッグマウス』と同じテーマですな。

 

キャストに関してもういっちょ、楢崎が狙ってる同僚女子役の吉永アユリウルトラマンタイガのピリカちゃんですね。特撮ヒロインと認識してる女優がラブシーンやってると別段エロいことしてなくてもめっちゃエロく感じる、あると思います。

 ボクシングの描写に関しては、そもそも現実のボクシングをあまり見たことないのでリアルかリアルじゃないか見分けられないけども、迫力あったと思います(小学生並みの感想)。

鑑賞してるときはいろいろ考えてたことあったはずなのに時間経つと忘れちゃうな……。メモ取りながら見るとかすべきですかね?

『街の上で』感想 これけっこう理想の生活じゃね(微ネタバレ)

見てからだいぶ時間経っちゃったけどこれは感想残しておかねば!

大好きな今泉力哉監督最新作だし評判もかなりいいから見る前から期待値MAXでしたよ。

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・引用 https://twitter.com/machinouede/status/1393533268394270726


 下北沢に住む荒川青(若葉竜也)は恋人の雪(穂志もえか)に浮気され振られてしまう。雪への未練を引きずる青の周囲に、古書店員の田辺(古川琴音)、卒制で映画を撮っている美大生の高橋(萩原みのり)、その映画の撮影クルーであるイハ(中田青渚)といった女子が絡んできて恋愛に発展するのかしないのか……みたいなあらすじ、では、ないな??? わからん!

というのも、なにか劇的なことが起こるわけでなく、日常の延長線上にこういうこともあるかもなあ……くらいなラインの出来事が連なっていくオフビートなお話なのである。だからそんな浮ついてる話じゃない。いややっぱ浮ついてはいるかも。

日常を切り取ったような映画、というのが肝。あくまで「切り取った」ような形だから、観客にはわからないことがとても多い。
例えばイハちゃんにずいぶん広いとこ住んでるねって言ったときの「ちょっと事情があってな」という返答。どういう事情があるのかは明かされない。もちろん物語に関係ないし説明しなくていいんだけど、しかし「事情がある」ということだけは言うあたりがやたら気になる。
あるいは田辺さんと不倫関係だった店長が死んじゃったということは語られるけど、その店長の人となりとか死因とか詳しいことはわからない。
そういったことは、その場にいる当人たちはとっくにわかっていたり後々わかったりすることで、覗き見ている我々だけが知らないまま。そういう描写の積み重ねにより、登場人物たちの実在感が半端ないことになっている。

やたらと力士関連の話が頻出するのとか、冒頭の意味深なラーメン屋の回想がただの気まずい思い出だったりとか、タバコもらうくだりとか、これはいったいどういう意味だろう?と考えてしまうことがとても多い。

 本作の白眉はなんといってもイハちゃんとの長回し恋バナシーン。
延々と恋バナを語り合い、このまま二人は寝るのか寝ないのか、みたいなハラハラは俺が感じてるだけでこの二人は純粋に恋バナ楽しんでるだけなのか? なにもわからない。俺の解釈だと青はワンチャンなさそうだと判断してて、イハちゃんは青の行動次第でどっちでもOKだと思ったんだけどどうでしょう。
「意識してない友達だからこそ深い話ができる」というのは牽制だけど一応のポーズっぽいというかその壁って壊れるの前提じゃね?と思う。「城定さん」と呼ばれたときの「ほらもう壊れたで?」は「それ以上壊すなよ」ともとれるし「もう壊れたからあとはわかるな?」ともとれる。俺だったら後者にとる。
だいたい家に呼んだ理由からもう怪しくて、布を広げるというよくわからん頼み(「実際もお茶の上」という最高のフレーズが飛び出す)、広げ終わったらあからさまにぞんざいな片付け方するし、普通に考えたらただの口実でしかないのでじゃあやる気マンマンだったのか……?

ほぼ全部の場面がコメディっぽい映画だけど、そこもなんかボケツッコミとかじゃなく、全員が真剣に真面目に会話してるゆえのおかしさ、この場にいたら俺もこんな反応しちゃうだろうなというリアルさ、後から思い返して「あれめっちゃ笑える場面だったな」と気付いてそれ以降飲み会のたびにネタにするみたいな場面ばかりだった。どのシーンも全部好き。

とにかく全部がリアルで、本当にいる人たちの本当に起こった出来事としか思えない。しかも女の子が全員かわいい。というのは俺が下北沢にいそうな文化系女子に憧れてるからか?

ところで、古着屋のカウンターで本読んでるだけ(に見える)仕事って羨ましすぎんか。

『ジェントルメン』感想 マンネリなのかこの感覚は(ネタバレなし)

ガイ・リッチーはめっちゃファンってわけでもないけど新作が公開されたらとりあえず見ようってくらい。
特に今はコロナ禍で洋画の大作はあまりかからないので、けっこう楽しみにしてましたよ。 

 マリファナビジネスの頭目・ミッキー(マシュー・マコノヒー)が事業を引退し、大富豪のマシュー(ジェレミー・ストロング)に権利を売り払うことになった。だが同時に中国マフィアのドライ・アイ(ヘンリー・ゴールディング)もミッキーに事業の売却をもちかけ、秘密のはずの製造プラントが謎のチンピラたちに襲撃される。さらにはロシアンマフィアやボクシングジムも絡んでいよいよゴチャゴチャに。事態の全容を掴んだらしい私立探偵フレッチャー(ヒュー・グラント)は、その秘密をネタにミッキーの腹心レイ(チャーリー・ハナム)を脅迫するが……というあらすじ(うろ覚え)。

カネを巡る群像劇ということで、ガイ・リッチーでいえば『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』『スナッチ』に似た印象のストーリー。ガイ・リッチー監督作の中でもみんな好きなタイプのやつですね。

 ガイ・リッチーはかなり作風に幅があるというか、作品によってカラーが極端に振れる印象がある。前作が『アラジン』ですからね。

 そんな中で久しぶりに初期作テイストの作品がやってきたつってみんな盛り上がってました。俺もけっこう期待してました。

初期二作も今作も「風呂敷を広げて畳む」というだけっちゃだけで、実は脚本が上手いというよりは編集の上手さで魅せるのがガイ・リッチー風味。スタイリッシュすぎて一周回ってギャグっぽくなる的な。映像の繋げかたを見れば誰でも共通したものを感じるんじゃないかしら。それは初期二作と今作に限ったことじゃないと思うんですね。

脚本面での作家性では、「落ち着くべきところに落ち着く」というところで一貫してると見てます。善人とまではいかないまでも観客が好感を持つキャラが勝つようになってる……のが『ロック、ストック〜』『スナッチ』だったんだけど、『ジェントルメン』にはその好感持てるキャラがいなくない……? コーチ(コリン・ファレル)は唯一のいい人だったけど、ただ巻き込まれただけだしなぁ。
それでも「落ち着くべきところに落ち着く」というオチにはなってて、でもそれってたくさん死人を出した結果なにも起きてないのと同じ状態になったみたいなことで、まあそれはそれで面白い……のか……? 
でも初期二作もそれと同じっちゃ同じ感じではあり、これは単にマンネリを感じてしまったということなのかもしれない。映画の規模が大きくなってキャスト陣も豪華なんだけど。この手の話は小規模なほうが楽しいのかもしれない。

探偵フレッチャーの解説による物語の進行はスムーズだしガイ・リッチーお得意のスタイリッシュ編集とマッチしてて、ややこしい話がスッと入ってきました。やさぐれヒュー・グラントすき。

キャストでいうとドライ・アイ役のヘンリー・ゴールディングも好きだった。『クレイジー・リッチ!』のイケメン大富豪の人ですね。あれ面白いからみんなに見てほしい。