『14歳の栞』感想(微ネタバレあり)
なにが微ネタバレありじゃ!!!!!
ノンフィクションの人生にネタバレもクソもあるか!!!!!!
生まれたての馬が、ぷるぷると震えながら自分の足で立つ。親馬は傍らで黙って見つめるだけだ。やがて子馬は、たくましく育った足で自在に駆け回り、外の世界を見つめる。ちょっと安直なくらいにわかりやすい導入から、この映画は始まる。
とある中学校の2年6組の三学期。クラス全員が均等に登場する。一人ひとりの持ち時間は物足りないと思うほどに少ない。みんなが多面性を見せてくれるが、それも彼らの人間性のごく一部なのだろうということもなんとなくわかる。
「このクラスは協調性のないやつがいない」と言う子がいる。「自分は他人とうまく馴染めない」と言う子がいる。教室に来られない子がいる。それは自分のせいだと責任を感じる子がいる。担任の先生は生徒との距離が近くて好かれていそうだ。生徒たちは「先生はすごく怖い」と言う。彼女持ちのリア充と孤立しがちな子が二人でゲームして遊んでいたりする。
ノートパソコンを抱えてGPSがなんちゃらと難しそうなことをしているギークな男子は、ウェイなノリのクラスメートのことを「そのへんのゴミはゴミで遊ばせとけばいい」とか言っちゃう。それを見てアイタタタ……と思っていると、直後には「大人になったら宇宙に行きたい」なんて夢をキラキラと語りだす。
中二にしてカップルなんていたら当然のように周りには冷やかされる。彼氏も彼女も心底ウンザリしている。彼氏に「大人になっても忘れたくないことは?」と聞くと、「彼女とLINEしてる時間が楽しいこと」と答える。
印象に残った場面をそのまま書いてるだけでいいなこれ。俺の感想いらんな。とにかく一事が万事この調子で、全員好きになっちゃいますよそりゃ。こういう大好きな場面がたくさんある。そのわりに情報量がハチャメチャ多いせいで詳細を覚えてないからあんまり具体例を挙げられない。でも見ながら感じたことはしっかり残っている。ちゃんと細かいとこまで覚えるためにもソフト化したら買って何度でも見返したいけど、作品の特性上ソフト化しない可能性ありそうじゃないですか? だからなんとしても劇場で見たかったんですよね。
悩みや愚痴を素直に吐露する彼らに、思わずアドバイスしてあげたくなる。インタビュアーはこれ大変だったと思います。「こうすればいいよ」なんて一言も言わず、ただ見守っている。この映画において「見守る」というスタンスはけっこう大事で、それは最後に表示されるメッセージにも表れている。
彼らは小さなことで悩み傷つきながら大人になっていく。その過程で、現在抱えている悩みが小さなことだと知るだろう。だから大丈夫。大丈夫だよと言いたくなったし、それはそのまま14歳の自分に言いたいことでもある。だから何気ないカットでいちいち泣きそうになるのだ。そこにいるのはかつての自分だから。泣かせに来てる場面なんかないのに、俺の近くに座っていたお姉さんがずっと涙を拭ってたのが印象的だった。
ところで、一瞬だけチラッと写るのだが、教室には谷川俊太郎『やわらかいいのち』の一節が張り出されている。
あなたは愛される
愛されることから逃れられない
先生!!!!!!
作品全体を包括する言葉が最初からずっとそこにあったとか!!!!!!!!
なにその粋な演出!!!!!!!!!
とにかく、みんなかつては14歳だったし、14歳はいつか大人になる……という……めちゃくちゃ月並みなことしか言えない……精進します……。
あと他の人のレビューとか読んでるとけっこうな人数が「自分はこの子たちみたいにキラキラしてなかったから眩しくてしょうがない」みたいに書いてるけどそれは間違いで、輝いてないと思ってた14歳の自分もまた大人たちから見ればキラキラしたものだったんだよ、ということなんだと思います。